愛する魔法
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小さな村の村はずれに、その家はあった。お世辞にも広いとは言えないけれど、ひと一 人が住むには充分の広さだ、とエリティラは思っていた。もっとも、数年前までは一人で はなく祖母と一緒に住んでいたのだが。 母親はもっと昔、エリティラがまだ幼い頃に亡くなった。でもその頃の事はあまり覚え ていない。父親についてはどこの誰だかも分からない。 「魔女の家系なんてそんなものさ」 幼い頃祖母にそう言い聞かされていた。なのでエリティラも特に父親についてあれこれ 思うことは無かった。 そう、村はずれに女一人で住んでいるのは、エリティラが魔女だからだ。 でも彼女は淋しくはなかった。魔女にしては彼女は村の人達に嫌われてはいなかったし、 特に未婚の女性達には人気があった。なぜって、彼女の恋占いは当たると評判だったから。 だから毎日のように彼女の元には女の子達が押し寄せていた。中には評判を聞いて遠く の村からやってくる娘たちもいた。当たるというのもあるのだが、同年代の女性なので相 談しやすいということもあった。 そんな訳で彼女は淋しいどころか忙しい毎日を送っていた。今日も朝から数人の恋占い をしたし、午後一番の客は以前から相談に乗っていたシラグが来ていた。 「ありがとう、エリティラ。あなたのおかげで幸せになれるわ」 本当に嬉しそうにシラグが笑う。 「おめでとう。良かったわ、本当に」 エリティラも彼女の結婚が決まって本当に嬉しかったし、自分の占いやアドバイスが役 に立ってほっとした。そう、占いは当たると評判ではあるけれど、それが良い結果になる のかはまた別の問題だ。エリティラは可能なら占いに来る娘たちを良い方向に導いてあげ たかったが、いつもうまくいくとは限らない。だけどシラグは本当に良い相手に巡り会え て、少し障害はあったもののこの度めでたく結婚が決まった。 「これ、たいしたものじゃないけれど御礼なの、受け取って」 シラグが小さな包みを差し出す。けれどエリティラは微笑んで首を横に振った。 「今日は占いも何もしてないもの、御礼なんて・・・」 相談に乗っている内に友達のようになっていたが、それでもちゃんと今まで占い料や相 談料はその都度もらっていた。これ以上貰うわけにはいかない。 けれどシラグも笑いながらそれをエリティラにぐいと押し付けた。 「いいえ、貰って頂戴。本当にたいした物じゃないし、感謝の気持ちなんだから」 そう言われ、エリティラも笑顔でそれを受け取った。 「ありがとう。中、見てもいい?」 シラグが頷き、エリティラは袋を開けた。中には小さな髪飾りが入っていた。 「まあ、かわいい。でも、私に似合うかしら?」 エリティラは嬉しそうに、その小さな花をかたどった髪飾りを見つめた。 こういったかわいらしいデザインのアクセサリーを見るのは大好きだった。きっとシラ グもそれに気づいてこの髪飾りをくれたのだろう。けれどこの髪飾りを実際につけること はたぶんないわね、と思った。 エリティラは魔女らしく、黒っぽい衣装に身を包み、化粧も普通の娘の仕方とは違った。 アクセサリーもかわいらしいタイプの物ではない。普通の村娘と同じ格好をしていたので は魔女は勤まらない。 そんなエリティラの思いに気づいたようにシラグが笑いかける。 「たまには自分が魔女だということを忘れてもいいんじゃない? きっと素顔のエリティ ラに、似合うと思うわ」 そんな彼女の嬉しい言葉に、エリティラは少し頬を染めた。 いつかこの毒々しい化粧を落としてこの髪飾りをつける日が来るのかしら。 けれどそんな日が来るとはとうてい思えなかった。 |