タイトル未定 その12  満月の光を浴びて、その塔は不気味に浮かび上がっていた。  迷うことなくその塔へ向かうキュリンギの足は、裸足だった。その後を、エルダはこっそりと 付いて行く。  夕食後に一度、村長に場所を案内してもらっているから、万が一彼女を見失っても場所は 分かっていた。だから充分な距離を取り、後をつけて行く。  やがて塔に辿り着くと彼女は、嬉しそうに声を上げた。 「愛しい貴方、わたしよ。出て来てちょうだい」  すると塔に明かりが灯り、一人の男が出て来た。  その姿を見てエルダは、まずいなと思った。茶色い髪、茶色い瞳。特に目立ったところのない平凡な、 何処にでもいそうな青年。だからこそ、まずい。  魔物には幾つか種類がある。  本来あるはずのない角があったり、しっぽが二つや目が三つ等の異形の動物や人の言葉を話す動物。 そして人の形をした、魔物。  人に近い程、魔物の力は強いとされている。つまりあの魔物は、かなりの強さを持っていると 推測出来るのだ。

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