伯爵様サイド その13 「で、このままアニメ……というか、ゲームの世界の通りになるのだとしたら、近い内に私の父上は 亡くなるのだろう。死因が分かれば防ぎようもあるのだろうが、それは描かれていない。少なくとも 病死ではないと思うが。今もとても健康だから」 死因が分かっていたなら、それを回避できたかもしれない。その事を考えたら気持ちが暗くなる。 父上が亡くならなければ俺が侯爵位を継ぐ事はなく、サンローズが産まれても侯爵令嬢とは 呼ばれない。そんな意味でも残念とは思うが、そうではく純粋に俺は父上が好きだから、死なないで ほしいと思ってしまうのだ。 「すると私がユーギル侯爵を継ぐことになる。私に息子がいれば伯爵位を息子に譲って私が侯爵に なるのだが、私にはまだ息子はいないから、おそらく侯爵と伯爵の二つの爵位を持つことになるだろう」 胸が痛い。父上が亡くなるのをどうにか防ぎたい。だが死因も時期も分からない以上、 防ぎようがない。 俺は誤魔化すように次の言葉を継ぐ。 「中には一人で三つの爵位を持つ者もいる。まあ、名乗るのは中で一番位の高い爵位のことが多いが」 「……つまり、サウス様はその内、伯爵様から侯爵様になられるのですね? そしてわたくし達の間に 産まれる娘がサンローズになると……」 これまで黙って聞いていたメリルが、難しい顔をしつつ口にする。 俺の言った事がどうにも納得出来ないような顔をしている。