エピローグ

   エピローグ  しばらくお休みしていたエリティラの恋占いが再会したと聞いて、近隣の娘たちが小さな家に押し 寄せてきた。 「お城の魔法使いに嫁いだって聞いたわ。どうして戻ってきたの?」  娘たちは興味津々に聞いてくる。 「あら、占いをしに来てくれたのかと思ったら」 「もちろん占いもしてもらうわよ。でも、気になるじゃない」  わいわいと娘たちが寄り集まりエリティラを囲む。 「ここに戻ってきた訳じゃないのよ。だから前みたいにいつでもという訳にはいかないの。取りあえず 三日に一度という約束になっているわ」 「三日に一度って、それ無理じゃないの? お城とここを往復するだけでもそれ以上かかるのに」 「それは大丈夫よ。主人に送ってもらうから」  恋占いはエリティラにとって、ただ生活費を稼ぐためのものではなかった。だからアルトワースと 話し合って、三日に一度通っても良いという話になった。そしてそのためにアルトワースが送り迎え してくれると。  城では今まで通りアルトワースの手伝いをすると共に城の女性たちの為の恋占いも始めた。以前から しないの? という声はあったし、王妃の後押しもあってアルトワースの邪魔にならないようにと隣の 空き部屋をひとつもらってそこで恋占いをする事になった。  ある日、アルトワースを手伝っていたエリティラは例の彼女の先祖の魔女についての記述の載った 本を見つけた。 「これって結局なんだったのかしら」  確かにアルトワースの言う通り、その本にはテアナン村の魔女に魔法をかけられ、心を操られたと 書いてある。 「どうした?」  やってきたアルトワースはエリティラの持っている本を見て、ああ、と苦笑した。そしてもう一冊 魔法書手に取り、開いて彼女に見せた。 「ここにも載っている。別の時代の魔法使いの記述だ」  そこにもやはりテアナン村の魔女とある。 「本当ね。……昔は本当にそういう魔法があったのかしら」  首を傾げるエリティラにアルトワースは目を細めた。 「さあ、どうだろうな。だが、そうだな。私もテアナン村の魔女に魔法をかけられたと本に書き残して おこうか」  冗談混じりにアルトワースが言う。エリティラはびっくりして目をまんまるにした。 「やだ、冗談でもやめてよ。それでまた何世代か先に、貴方みたいな魔法使いがテアナン村の魔女に 魔法を教えろって来たらどうするのよ」  今回は良い結果になったけれど、毎回そうとは限らない。その時テアナン村にいる魔女が彼女の 子孫なのか全く関係のない魔女なのかは分からないけれど、どちらにしろその人を困らせるかも しれない記述は残しておきたくなかった。  半分怒っているようなエリティラをなだめるようにその頬にキスをしてアルトワースは笑った。 それを見て、笑い事じゃないでしょうと言いたげな彼女にアルトワースは告げる。 「良い考えだと思ったんだがなぁ。事実なのだし」  楽しそうに彼は笑って言う。 「私、アルトワースはテアナン村の魔女、エリティラに魔法をかけられた。それは、彼女のことを 愛する魔法だった。ってね」

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